プラスチックごみと共進的な持続可能性
更新日:2023.03.28
プラスチック製品にかぎらずどのようなモノであっても、原料の調達から始まり、製品となり、消費され、リサイクルされる過程には、数多の企業に行政や消費者など、多数の組織や人が関係している。これは1つの社会システムである。このシステムを構成している組織や人は互いに緊密に結びつき、ごみをめぐる問題に対しても、それを解決すべく取り組んでいる。
経済成長とともに顕在化した現代的なごみ問題に対応すべく、1970年に廃棄物処理法が制定された。ここを起点にしても、その歴史はすでに半世紀を超える。多くの組織や人が、50年以上にわたる努力をしてきた。しかし、海洋汚染やマイクロ・プラスチック、気候変動への影響も含めた様々なリスクなど、プラスチックごみをめぐる問題は複数の形で深刻化している。
ごみの総量は横ばいから漸減の傾向にあり、これまでの対策に効果がなかったわけではない。しかしプラスチック問題の複雑化と深刻化という大きな流れは続いている。では、どうすればよいのか。社会システムという視点から捉えると、個々の取り組みが効果を上げるためには、互いの連携のあり方が重要である。各々が全体のために良かれと思ってやったことでも、連携がうまくできていないと効果が上がらないことは少なくない。これまでの対策における連携のあり方には、まだまだ改善の余地があるのではないか。
共進性は、連携の改善のヒントになるものである。この言葉は、生物学における共進化に着想をえたものである。ある生物が変化すると、それに伴って別の生物も変化するという相互作用による進化が共進化である。これを社会システムに適用するとどうなるか。社会問題を解決すべく社会システムを変化させようとするのであれば、立場を異ならせる組織や人が方向性を共有しながら連携し、その相互作用の中で変化していくことが必要となる。
プラスチックの生活への普及は1950年代以降である。その浸透ぶりは急速であり、かつ深部に達している。スーパーマーケットで、内容物や容器包装類にプラスチックを使用していないものだけを買おうとするとどうなるかを考えてみれば、現代社会での生活がいかにプラスチックに依存しているかが分かるだろう。
この浸透度の深さと、半世紀にわたるごみ問題との苦闘の歴史をふまえれば、プラスチックごみ問題の解決は容易ではないと言える。この壁を打破するためには、原料調達や製造の段階も含めたあらゆる関係者が緊密に連携し、その中で、持続可能な社会に向けた変化をしていく必要がある。
関東学院大学社会学部
湯浅陽一
湯浅 陽一
関東学院大学社会学部教授
法政大学大学院修了。博士(社会学)
2006年度関東学院大学着任。2013年度より現職。
著書に『政策公共圏と負担の社会学』(2005年、新評論)、『エネルギーと地方財政の社会学』(2018年、春風社)など。